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大阪家庭裁判所 昭和44年(家)1942号 審判 1969年4月01日

申立人 桑田政市(仮名)

未成年者 桑田朋子(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

本件申立理由の要旨は、申立人には子がないところ、未成年者を養子とし、同人を相続人として申立人の安田家を承継させたいので、申立人が未成年者を養子とすることの許可を求める、というのである。

よつて審案するに、調査の結果によると、申立人の桑田家は、未成年者の親権者父桑田政治の本家に当るところ、申立人には子がなく、またさし当つて、将来結婚し子を得る見込もないので、申立人および未成年者の親権者らは、将来上記桑田家の絶えることを懸念するあまり、「桑田」の家を、未成年者に承継させるため、申立人と未成年者との養子縁組を希望するに至つたこと、および、いま養子縁組するとしても、それは戸籍の上だけのことであつて、申立人と未成年者は今後親子として共同生活をともにするものではなく、また、未成年者は現にその父母である親権者によつて適切に監護教育されており、今後も引きつづき父母のもとにあつて親子として生活しその監護教育を受けるものであることが認められる。

上記認定の実情によると、本件申立は、未成年者の現在および将来の福祉の確保とその向上の考慮よりも、もつぱら家名承継を目的としてなされたものであつて、家の制度を廃止した現行民法の定める養子縁組制度の趣旨にてい触すること明らかである。付言すれば、本件のような実情のもとにおいては、未成年者の父母が名実ともに親権者として同人の監護教育に当ることこそ、その福祉のために最も適切である。

以上の次第で、本件申立は理由がないのでこれを却下することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 西尾太郎)

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